吸血鬼のお菓子

 私が菓子を抱えて彼と会うのは大抵日が落ちてからだった。

 なぜなら、彼は昼間をほとんど寝て過ごす。夜型なのだ。それもそのはず、彼の正体は「夜の支配者」と呼ばれる吸血鬼だからだ。

 とはいえ、私は血を差し出しに向かうわけではない。彼の目的は人間がよく食べている菓子だ。私が運び人となり、様々な菓子を届けている。

「新発売のものをいくつか選んできたよ」

「おお、素晴らしい」

 パッケージを目の前にすると、どれから開けようかと何分も悩むのは毎度のことだった。

 ようやく決まると、君もひとつどうだと勧められる。夜中の菓子はどうして甘苦しいのだろう。彼は星空を眺めながら、「スーパーマーケットではこの夜空に浮かぶ星と同じくらい多くの菓子が手に入る」とうっとりとした表情で言う。鋭い牙が菓子を砕いていく。

「ハロウィンはもうすぐだよ」と私は慰める。

 バンパイアハンターを恐れる彼は、街が仮装者で溢れかえるハロウィンの夜にのみ自らの足でスーパーマーケットへと向かう。普段は私が季節限定品や彼のお気に入りを調達するのだが、似たような見た目をした人間たちに紛れ込めば、本物だと気づかれることなくゆっくりと買い物ができるというわけだ。

 魔物たちの住む場所に迷い込み、吸血鬼と鉢合わせしたとき、血はあげられないがお口に合えばと渡したチョコレートがそもそもの始まりだった。捧げ物が功を奏し、私は無事家に戻ることができたが、翌日、窓からぬっと現れた彼が言った。

「この菓子はどこで手に入るんだ!」

 手にはくしゃくしゃになった包装紙が握られていた。

「スーパーマーケットに住みたい」が彼の口癖だった。特別な日の夜に、カゴの中がお菓子の袋で山積みになっていく様を、私は毎年隣で眺めている。